#35 ドラゴンの癒し-韓国・結婚・思考の軌跡2

CIMG1942.JPG

ソウルに到着した初日。
 
式を次の日に控えた知人が、
時間をとって自分達に会いに来てくれた。
 

式の打ち合わせや、
"ハン"と呼ばれる
韓国伝統の婚前セレモニーを終わらせ、
合流したのが午後11時過ぎ。  
 

そこから、

"ドラゴンヒルスパ"

という、スパリゾートに案内してくれた。
 

7階建てのビル全てのフロアが
"ドラゴン"の施設で、浴場以外にも
フィットネスクラブ、プール、映画館、エステ、カラオケ、ビアガーデンと、
実にいろいろなものが詰め込まれていた。
 
入り口には、
日本から来た有名人の写真が
30枚ほど飾られていた。


入場料を出してもらい、
中へ入る。
 
土曜日だからだろうか、
夜の12時前だというのに
多くの人で混雑している。
 
日本人というよりも、
地元の韓国の人が多いみたい。
 
若い人の中でも、
中高生が多いようだ。
 
カップルも多い。
年配者はちらほら。
 
 
割り当てられたロッカーに服を押し込み、
浴場へと体を向ける。
 
いくつもの浴槽が配置され、
シャワーを浴びて、
ぶくぶくのお風呂に入る。

 
わりと広めの水風呂で、
ゴーグルをつけた男の子が2人、
狂ったように水遊びをしている。

1人が必殺技を繰り出し、
もう1人が派手に飛び跳ねる。

水しぶきが遠くまで飛んでくる。

何人かの大人が通るたびに、
大きな声で注意をしている。

その時は黙る彼らだが、
数秒後には、またもとのように狂いだす。

たくましい(?)子ども達だ。
 
 
せっかくなので、
75,000ウォンを出して、
アカスリをしてもらうことに。

 
浴場の奥に作られた
アカスリ用の部屋。

5台のベッドに、2人の担当。
 

殺風景なその部屋からは、
解剖室のような、
死体安置所のような、
無機質な匂いがする。

 
昔見た、

   『カル

という、韓国映画を思い出した。
 

   好きになった相手の体の中で
   一番好きな部分だけを取り出して、

   何人もの好きになった人から各パーツを集めて、
   それらをつなぎ合わせて
   自分の理想の男の体を
   ホルマリンの中で再現しようとした女の話。


偏執的な愛ゆえの
狂気の映画だったと思う。

そこに出てきた手術台を思い出す。

殺した相手の
特定部位だけを切り分けるためのベッド。


ちょっと怖くなる。
 
同行の男の子が言っていた、


   "アカスリって初めてなんですよ。
   体を他の人に預けるのって、
   勇気が要りますよね。"


という言葉が、
今になってリアルに響く。

 
片言の韓国語であいさつを交わし、
ベッドに仰向けになる。
 
担当さんは、
骨ばった顔つきに肉厚な体格。
 

とても力が強そうだ。
 
裸の人間の体のすみからすみまで、
アカスリ用のタオルでごしごし。
 

彼らにとっては、これが日常。
 
人間の体について、

"どう押せばどう感じる"

という感覚に長けているはずだ。
 
少なくとも自分よりは。

 
きっと、
自分では一生届かないであろう、
触れることがないであろう
体の部分に施術の手を伸ばす。
 

流れ作業のように、
次から次へと、
ごしごしが移っていく。

動きに無駄がない。
 
 
20分くらいのアカスリが終わり、
全身マッサージが始まった。 
 
痛い時もあれば、
くすぐったい時もある。


    「イタイデスカ?」
 
   ―ちょっと、痛いです・・・


痛いかどうかを聞いてくれる。
くすぐったくて、
筋肉が緊張するのを抑えられない。
 

    「ヤマモトサーン!ヤマモトサーン!」
 
 
声が近付いてきて、
部屋の前で止まった。
 

"ヤマモト"という人を探しに来た従業員が、
部屋をのぞいて帰って行った。
 
外では相変わらず、
子ども達の狂宴が続いている。

   
    「イタイデスカ?」

   ―・・・痛いです、ちょっと。 
 
 
つま先が、
いびつな方向性を持って
硬直するのが分かる。

手が無意識に首元に寄って行く。

聞いてくれるわりには、
強さが全然変わらない。
 

うつ伏せになったまま、隣に顔を向けると、
自分より少し先に始めた同行の男の子が、
仰向けになったまま顔にタオルを乗せられて、
お湯に浸した青いタオルを全身に被せられていた。


いよいよ死体のように見えてくる。
数分後の自分の未来が、
そこにある。
わなわな。

   
     「イタイデスカ?」

    ―痛いです!


"ちょっと"を外して、
語気を強めた。
 

痛いのと、くすぐったいのが、
まぜこぜになったような感覚。

 
ようやく分かってくれたのか、
施術の手が緩やかに。
 
でも、やっぱりくすぐったい。

 
そう言えば、以前、
札幌の整体師さんにマッサージしてもらった時も、
こんな感じだったな~。

特に首周り。
自分はマッサージされるのに
向いていないんだろうな。

 
全工程を終えて、
退室。
 
シャワーを浴びて、
ロッカールームへ。

 
ほぐれたのかほぐれていないのか良く分からないが、
何となくすっきりしたような自分の体をバスタオルで包み、
あてがわれたスウェットに着替える。
 
 
   裸で走り回る子ども達。
   自動販売機の前で眠る男性。
   アイスクリームを食べる女の子のグループ。
   い草のマットで敷き詰められた仮眠室で、
   つがいになって横になるたくさんのカップル。
   狭いカラオケルームで、熱狂して歌う男の子のグループ。
 

もう2時前。
まだ2時前?
 
エネルギーに満ちあふれている。
韓国恐るべし。 

 
ホテルに帰る頃には、
2時を回っていた。
 
明日は、
知人の結婚式。
 
午後3時からだから、
午前中にどこかへ出かけてみようかな。 
 
 今回はこの辺でzzz

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://ainoue.net/mt/mt-tb.cgi/155

コメントする

ウェブページ

アーカイブ

アイテム

  • P1040776.JPG
  • P1040630.JPG
  • P1040774.JPG
  • books.jpeg
  • P1040062.JPG
  • P1040639.JPG
  • 51IDakozVnL._SS400_.jpg
  • 517rp-clXkL._SS500_.jpg
  • 51kMcQCOAPL._SS500_.jpg
  • P1040038.JPG

2011年4月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30