#47 "カップル"という現象-社交ダンス教師という仕事4

札幌もいよいよ
暑くなってきました。
 
灰色の雲に陽光がさえぎられ、
ムシムシとして、
皮膚にまとわりつくような暑さ。
 
少し動いただけで、
汗がにじんできます。

 
今の季節らしいと言えば
確かにそんな気候だけど、

ぼくが札幌に来た頃は、
もっと風が涼やかで、
太陽がさんさんと照っていて、
湿気が無くてからっとしていたような気がします。


    10年も経つと、
    気候も変わっていくのでしょうか。
 
    それとも、
    自分の感じ方が変わったのでしょうか。
 

札幌の気候、自分の感覚、
そのどっちもが変化しているんでしょう。

ぼくは今、
この季節の札幌で、
社交ダンスの教師として生活している。
 

今回は、社交ダンス教師の中でも、
"競技選手"としての部分について、
何か考えてみたい。

 
社交ダンスは、
男女が対になって踊るダンス。
 
それが、
他のダンスと一線を画す
一番の要素と言っても良い。

 
バレエの群舞やヒップホップのチームダンスとは違い、「2人で組んで踊る」ことが前提になっているために、他のダンスには無い、2人で組んで踊るための技術が体系化されている。

 だから、プロ選手として競技会にデヴューする時は、個人ではなく、2人で1つの"〇〇・△△組"という名前でデヴューすることになる。
 
 "カップル"という1つのユニットを結成することが、競技選手としての最初の作業。
 自分で相手を見つけてくる場合もあれば、所属教室の経営者や他の先生からの紹介で結成に至ることもある。そして、どの競技会をデヴュー戦にするかを決め、それに向けてステップを作り、練習に励む。そうやってデヴューする。
 
 しかし、どのユニットもそうだけど、"結成"があれば"解散"もある。
 将来を見込まれて結成した2人も、考え方の違いや目指す方向の違いによって解散することがある。
 社交ダンスの世界では、これを"カップル解消"と呼んでいる。

 カップル結成、カップル解消という現象。
 
 最初は無名だった2人がカップルを結成して、1年目、2年目は成績が出なかったけど、ある大会でのブレイクをきっかけに、その後の競技会では躍進するとか。そして、パートナーシップが継続していて、今後も良好に継続していきそうな雰囲気を周囲に認めてもらえれば、2人で作る"〇〇・△△組"というブランドに舞い込む仕事も増えていくようになるとか。
 また、競技会での成績が優秀なカップルが解消して、それぞれが全く違うパートナーと新しいカップルを結成して競技会にカムバックするとか。

 お笑い芸人のコンビと同じような感じ。 
 
 これは、他の業界にはあんまり無い独特の現象だと思う。
 一般企業での言葉に言い換えるなら、カップル結成(解消)は「プロジェクトチームの立ち上げ(解散)」になると思う。
 たった2人だけど、チーム。そして、チームメイトは同僚、相方、パートナー。
 
 そんな世界。

 プロの競技ダンスの選手には、夫婦や恋人が多い。
 特に、何年も同じ相手と競技生活を続けている人に多い。
 この世界に確かな居場所を確立して生計を立てている人達。
 周りを見渡すと、ほとんど全てが夫婦だ。 
 カップルを結成してすぐに恋仲になる場合もあるし、何年も経ってから"情が移って"そうなる場合もある。

 何でそうなのか?
 何で夫婦や恋人が多いのか? 
 
 その理由は、"合理的だから"。
 
 一言で言ってしまうと、そうなると思う。
 夫婦や恋人になった方が、プロ選手として続けていく上で、損なことが少なくて得なことが多いからだと思う。
 仮説だけど。

 この社交ダンスの世界で生計を立てている選手達は、お互いに恋仲、夫婦になることが構造的に宿命付けられているように見える。そうじゃないと続けていけないというか。
 そういう選択がこの世界で生きていく上で最適というか。

 当たり前のように思えるけど、もう少し掘り下げて考えてみたい。
 どの辺が合理的なんだろうとか。

 まず経済面。

 経済面で見れば独立して生活する1人と1人が、それぞれに生活機材をひと揃え用意するよりも、一緒に住んで生活を1つにした方が合理的。
 
 そういう意味では、恋人じゃなくてもルームシェアみたいにすれば同じことか。
 でも、それはあり得ないか。
 恋人でもない異性とルームシェアなんて。
 
 さておき。

 生活を1つにすると、自分達に投資する資金も貯まりやすい。
 衣装を作る費用、レッスンを受ける費用、シューズや備品の費用、自分達のスタジオをオープンする費用、自分の体をメンテナンスする費用、遠征費用、海外留学の費用・・・
 
 逆に、2人の距離が離れていると、片方のスタジオに練習しに行かなければならないため、交通費が固定費として恒常的に加算されていく。それに、遠征した時の部屋の選択(ツイン1部屋ではなくてシングル2部屋になる)でも費用に差が出てくる。
 
 また、恋人同士でも何でもない間柄で出発した2人は、「とりあえず1年やってみますか」といったユルい契約でカップルになるために、長期的なプランを立てにくいということも出てくる。
 例えば、「3年後にブラックプールのダンス選手権に出場して、そこで最終予選に残ることを中期的な目標にしよう。そして、そのためにこの1年、ベーシックの理解をテーマにして、それに対応したレッスンを3ヶ月に1回、東京の〇〇先生に受けに行こう・・・」とか。
 お互いに深い関係じゃないと、そういうことを想像しにくいのかもしれない。
 それだけ、毎日濃密な時間を共有する間柄になるので。 

  
 あと、精神面とか、競技選手としての競技成績の蓄積とかについても考えられそう。
 続きは明日考えようか。
 
 今回はこの辺でzzz

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