#87 風景にとけ込んで見えなくなってしまったもの-社交ダンス界の恋愛システム1

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《通勤途中の札幌の風景。曇り空なのがちょっと残念・・・》

 昨日の札幌。

 すっかり涼しくなってしまいました。

 特に夜。

 

 この夏は、実質1週間くらいしかなかったんじゃないでしょうか。

 夏!と感じられる日が。


 寂しいを通り越して、哀しみさえ感じます。


 夏は暑くて冬は寒い、と言われる旭川はどんな夏だったんだろうか。

 台風が吹き荒れた、兵庫や鳥取や香川はどんな夏だったんだろうか。

 

 一瞬で過去になってしまった「夏」のかけらを慈しみながら、今月の札幌を味わおうと思います。


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 今日からは、「社交ダンス界の恋愛システム」について。

 「社交ダンス界のサクセスモデル」の続編というか、別角度からの思考というか、関連した内容になれば、と思っています。


 最近、自分の周りで、"カップル解消"という現象が増加しているようです。


 なぜ?

 

 これについて、シリーズで考えていきたいと思います。


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 社交ダンスの世界で競技会に出ようと思った時、プロアマ関係なく、必ずしなければならないことがある。


 それは。


 "カップル登録"という作業。


 社交ダンスは2人でするもの。

 だから、競技会もカップルにならないと出られないことになっている。

 

 どうでも良い事だけど、社交ダンス界では、男女の組のことを"ペア"と言わず、"カップル"と呼ぶことが広く採用されているみたいだ。

 

 理由は分からないけど。

 だから、初心者の生徒さんにレッスンする時に、生徒さんから"ペア"という単語を聞くと、なんだかとてもほんわかした気持ちになる。

 遠い昔に置いてきた記憶を、突然目の前に差し出されたような、そんな懐かしい感覚。


 さておき。

 

 カップルを組むためには、まず相手を探して、「(ひとまず)良い成績目指して、一緒にがんばろう!」と、意思を確認する流れになる。


 相手探しには、だいたい3つの道があるらしい。

 

 ①自分で見つける

 ②教室の先生や知人のダンス仲間の紹介で

 ③社交ダンス専門のマッチングサイトや、誌面上の「パートナー募集」欄で


 特に③では、年齢、身長、練習可能時間、目指すところ、持ちクラス等を表記して、誰かからコンタクトがあるのを待つ。もしくはそれを見てコンタクトする。

 

 昔の「文通相手募集!」みたいなのと同じような感じもするし、目的のはっきりした「出会い系サイト」のような感じもする。


 誰かと誰かを引き合わせるという営みは、きっと大昔から続けられてきたんだろうなー。


 こうやって、晴れてカップルになる。


 アマチュアだと、「いついつ練習して、どこの練習場に行って、どこの先生にレッスンを受けて、どの大会にエントリーして・・・」。


 プロだと、「(基本的に毎日)何時から何時まで練習して、いつ誰にレッスンを受けに行って、いつどこの業者に衣装作りを頼んで、(基本的にどの大会も出場するけど中でも)どの大会に照準を絞って・・・」。


 各々そんな感じで、その後の競技ダンスライフをイメージする。


 でも。


 こうやって、結成して未来を共に思い描いた2人にも、別れの時がやってくる。

 

 カップル解消。


 お笑いの世界で言う、コンビ解散。

 一般の社会で言う、離婚。

 

 自分は、アマチュアの時に2回。

 プロになってから1回。


 計3回のカップル解消を経験した。

 

 もちろん、実際の離婚とは違う所もあるけど、"擬似離婚"のような感覚で、今も自分の中に残っている。恋仲になっていなかった時も、恋愛におけるセパレートとかなり似た部分があった。この手の話をするには、とても勇気が要ったし、決心も要ったし、心の準備も要った。


 1回目は、なんとなく熱が冷め。

 2回目は、自分の幼さゆえに相手や周りを傷付けてしまい。

 3回目は、相手と自分の将来を考えた上での、前向きな、でも辛い別れ。

 そんな感じだった。自分の場合。


 それだけ濃密な時間を共有し、身体と身体をくっつけあい、意思と意思をぶつけ合う。

 衣装を着る時、背中のホックを留める時に相手の身体に触れるとか(男がパートナーの衣装を着せることが多い)、相手のメイクをする時に顔を近付けて相手の顔に触るとか(女が男のメイクをすることが多い)。

 

 当たり前になりすぎて、何にも感じなくなってしまったけど、これってかなり非日常だ。

 

 相手の身体に触れることが当たり前なんだから。

 それも、別に恋仲でも夫婦でもない間柄で、自然にそういう関係になるんだから。

 手を取るのが恥ずかしい、身体をくっ付けるのが恥ずかしい、なんていう時の気持ちは遠い昔に消化してしまった人達。それでも、相手に近付くときめきを踊りに反映させようとする人達。それが、社交ダンス界にいる人達。 


 毎日のように会い、共通の目的に向かい、身体を寄せ合い、言葉を交わす。

 

 これって・・・

 

 恋人?夫婦?!


 そんな錯覚になる。


 一緒に住んでいなくても、そう思ってしまう。

 擬似結婚を体験しているような、結婚生活のシュミレーションをしているような。


 だから、お互いに別に何とも思っていなかった者同士が、先生の紹介とかで(お見合いで)組んだとしても、日を追うにつれて、だんだんと親密になって恋仲になって、結婚に至るというケースがあったんじゃないか。


 そんな気がする。


 お互いに別に何とも思っていない男と女が、恋人のように振舞うことが前提とされた世界。

 恋仲への転化や結婚が構造化された世界。

 それが社交ダンスの世界だ。


 逆に言うと、お互いに何とも思っていなかった男と女が、そういう環境に身を置くことで、実際の結婚生活みたいなものを経験して、その先の生活を想像して、「あ、こんな感じだったら良いかも。」みたいな感じになって、恋仲になって結婚に至る、という図式が成り立ってもおかしくないと思う。


 実際、話を聞いてみると、今の上の世代の人たちは、そうやって今の立場にいるわけだから。

 

 前置きが長くなったけど。


 では。


 なぜ、そういう「恋仲になりやすい環境」が整っていたのに、最近"カップル解消"が増えてきたんだろうか。


 次回からは、先日揚げた『「エコ恋愛」婚の時代』(牛窪恵)を参考にしながら、考えていきたいと思います。  


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