≪この社会(世界)の中には、さらにいろんな世界があって、
社交ダンスの世界もそのうちの1つ。
前回は、社交ダンス界の恋愛システムについて、というよりも、
社交ダンス界のサクセスモデルが破綻しつつあるんじゃないか
ということについて触れた気がする。
「社交ダンス界のサクセスモデル」とは、
①夢
②収入
③家庭
の三位一体構造のこと。
配分は個人にもよるけど、
基本的にこの3つを同時に追求していく生き方のこと。
そして、この「社交ダンス界のサクセスモデル」が破綻しつつあるということは、
この3つの間に何らかの亀裂が生まれているんじゃないかということ。
この三位一体の構造が揺らいでいるんじゃないかということ。
特に、「①と②」と③の間に断絶が生まれているんじゃないかと。
そして、それを現実に志向する人たちが現れてきたんじゃないか、
ということを書いた。
「ダンスはしたいけど、他に好きな人が出来たらやめる。」とか、
「ダンスはしたいし、競技会にも出たいけど、将来的には違う世界で生きていきたい。」
そんな考えを持つ人達。
だから、これまでのモデルに乗っかって生きている人達(40代以上の先生方)には、
理解できない部分もあるかもしれない。
だけど、今、この瞬間、この世界で生きている29歳の自分には、
今感じる閉塞感や、他の人達に見られるカップル解消なんかの現象が、
この、従来のサクセスモデルに無理がきている証拠だと思えてならない。
そう直感しているし、たぶん正しいと思っている。
「我慢が足りない」とか、
「縁が無かった」とか、
「この世界で生きるのに向いてない」とか、
そういった"お決まりの"言葉でもって、説明した気になりたくない。
個人レベルの"満たされなさ"や閉塞感と、集団レベルのカップル解消という問題。
それはどこかでつながっているんじゃないかと思っています。
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恋愛について。
ちょっと、社交ダンス界のサクセスモデルの話にかかりすぎました。
牛窪恵さんは、
『「エコ恋愛」婚の時代』の中で、こんなことを言っていました。
気になった部分を要約すると。
従来の"恋愛万能主義"
(恋愛して、男と女の関係になって、結婚する)
というモデルは、
そろそろ破綻しつつあるんじゃないか。
その証拠に、
従来の価値観からは「男らしくない!」との非難を受けるような
「草食系男子」なる人達が出現している。
彼らの口から出る「別に結婚してもしなくても良い」とか、
「趣味としての結婚」という価値観が広まりつつある現在では、
その入り口にあたる"恋愛"にすら「別に無理にしなくてもいいんじゃない?」
的な価値観が投影されつつある・・・
こんな感じ。
とても新鮮です。
なるほど~。今の世の中そうなってるのか~。
なんて思ってみます。
ちなみにぼくは、いつの時代も「男と女は恋に落ちて結ばれる」と信じている
"夢見る少年(?)"だったので、「この図式は大昔から存在していたんだろうな~」と
全く疑問を感じずに思っていたけど、
"恋愛万能主義"が、たかだか30年くらい前に生まれた価値観だということを知って、
そういうことを言う人がいると知って、とても衝撃を受けました。
山田昌弘さんも
「恋愛→性(男と女の関係になる)→結婚」というモデルが、
つい最近出現したものだということを書いています(『結婚の社会学』)。
ん~、新鮮だ。
そうなのか・・・
さておき。
社交ダンスの世界では、
(ひとまず組んでみて)恋愛に発展して、
男と女の関係になって、結婚を意識して・・・
というストーリーが、牧歌的に信じられています。
これは、社交ダンスの世界の上に広がる、
一般社会で言われていた"恋愛万能主義"と同じストーリー。
「恋愛・性・結婚」というモデル。
上位の世界でこれに破綻が生まれつつあるということは、
下位の世界である社交ダンスの世界でも、
この物語にほころびが生じつつあると疑ってみるのが常道だと思います。
社交ダンスの世界は、「結婚」が内部化した世界。
仕事をすることと相手と結婚することが、不可分に離れがたく結び付いた世界。
1人でも仕事が出来ないわけじゃないけど、
いわゆる、これまで「成功した」と言われる人達は、
みんなその図式に乗っかって今の立場にいます。
だから、これまで「結婚」の源とされていた「恋愛」に対して、
「別にしなくてもいいんじゃない?」的な見方が広まると、
結婚へのモチベーションが下がるのは当然だと思います。
「恋愛して、男と女の関係になって、結婚」した2人が、
社交ダンスの世界で、「夢・収入・家庭」という3つの目的を同時に追いかける。
そういった物語が支配的だった時代。
それは、つい最近まで(今の40代以上の先生方の時代まで)。
この物語が大流行した時代は、逆算すると、だいたい20年~30年前じゃないだろうか。
そう思います。
今の40代以上の先生方が、20代前半で今のパートナーと出会い、
社交ダンスの世界を歩み始めた頃。
その頃には、この物語が広く信じられていたんだろう。
「夢・収入・家庭」というモデル。
「恋・性・結婚」というモデル。
社交ダンスの世界にいる人達には、2階層のモデルが浸透していたということでしょうか。
そして、その2つともにほころびが出てきているから、
それが、"カップル解消"とか、何か理由の分からない"満たされなさ"とかいうふうな形で、
現象していたということでしょうか。
そんな気がします。
「夢・収入・家庭」という三位一体構造が崩れ、
「恋・性・結婚」という三位一体構造も崩れ、
それ故に、カップルを長期に継続する事ができない人が増えたんじゃないか。
そうにらんでいます。
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ひとまず、この辺で。
図とか、表をもっとたくさん作ったりしたいと思っているのですが、
やり方が良く分からなくて、
結局今回は、手書きをデジカメに映すという超アナログな方法にしてしまいました...
はじめまして。renoaです。
過去の記事にコメントで申し訳ありません。
でも、面白いと思って。
「ダンスもしたいし、大会にも出たい。けど、やめたくなったらやめるし、外に(社交ダンスの世界の外に)好きな人が出来たらやめる。」
でも、限りなく20代に近い方々だから出来ること。
そりゃあ1番はダンスパートナー=人生のパートナー=本当の恋愛対象、ですよね。
始まりはその予定だった⇒でも今は違う⇒だけど年齢を考えるとダンス以外の道に進むことは難しい⇒つまりパートナーと結婚しないと生きていけない。
そんな人もいるのかな~と思いました。
社交ダンスの先生がダンス以外の方と結婚しても仕事が成り立つ、そんな図式が今後成り立つと良いですね。なかなか難しそうですが・・・。
余談ですが。社交ダンスって楽譜みたいですね。
ステップで楽譜の音符を踏んでるような。でも解釈は自由。作曲家の指示はあるけど、それはその人の解釈次第、みたいな。だから同じ1曲で大勢で踊っても、皆違うのかな??たまにその解釈・個性じゃなくておかしいよ!!ってこともあるのかも知れないですね~。
それでは今後の記事も楽しみにしております。イノウエさんらしく豊かな人生とダンスを!!
renoaさん、コメントありがとうございます♪
ぼくは、この文章を「最新の情報をお届けします!」というよりも、
「長い時間寝かせても味わいを損なわない」ようなものにしたいと思っていました。
それだけに嬉しいです。
確かに理想は、
「ダンスパートナー=人生のパートナー=本当の恋愛対象」
ですよね。
僕もそう思います。
でも、そんなの堅苦しい、と考えて、実際にそうしている同業者もいるんです。
少数派ですが。
「始まりはその予定だった⇒でも今は違う⇒だけど年齢を考えるとダンス以外の道に進むことは難しい⇒つまりパートナーと結婚しないと生きていけない。」
というご指摘、とても新鮮でした。
「自分がそうしたいかどうか」というよりも、
そうせざるを得ない状況になってしまうというか。
そういうものを考えるきっかけを与えてくださり、
ありがとうございます。
状況が熟して、
「一緒になるか…」と言って結婚に至る。
そういうパターンもあるんでしょうね。
仕事上のパートナー。
人生のパートナー。
になる異性が、同じじゃない。
っていうことを主張することは、
今の時代、この世界ではまだまだ少数派ですね。
でも、そういう人ものびのびと生きていられる社交ダンス界であってほしいと思います。
音符のお話、おもしろい視点ですね!
ぼくは、よく、「身体は音楽を奏でる楽器」という感覚でいました。
音楽に合わせて身体を動かしているのではなくて、
動いている身体から音が出て、音楽を奏でているように見えるようになりたい。
そう思っていました。
すごいダンサーの踊りを見ると、
あたかもその人の動きに合わせて音楽がついてきているような、
そんな気持ちになってしまうのです。
どの音符をどの強さや長さで演奏するかは、踊り手の自由なんだと思っています。
まさにステップが音符を表現しているんでしょうね。
今後も継続してお届けできれば、と思っています。
どうぞよろしくお願いします♪