#184 サンデルの"正義"

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《荘厳なる東大寺本殿。夏雲が屋根の向こうから飛んできます。》

先日、NHKのプログラムで次のようなものがありました。

それは「ハーバード白熱教室」というもの。

マイケル・サンデルという政治哲学者が、
東京大学の安田講堂で講義をするという内容でした。
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人間が生きるうえで、
答えの出なさそうな超難問を提起し、
聴講者から意見を募りながらああだこうだと
考えていくという内容でした。

そこから1つ。
とても大切な問いを記録しておこうと思います。

それは、

これまでも答えが出なかったし、
これからもたぶん出なさそうな問いで、
死ぬまで考えなくてもそれはそれで済みそうだけど、
やっぱりそれについて何かを考えておいた方が良さそうな問いです。

それは、

「自分の前世代の道徳的責任について」の話です。

言い換えると、

「自分は直接関係していないけど、自分がその共同体に所属する前に、
その共同体が行った負の歴史についてどのように自分は関わるのか」

という話です。長い・・・

具体例を挙げてみます。

自分が入社する前にその会社は世間を揺るがす不祥事を起こしていた。
その不祥事は、自分が入社する前に起こされたものだから、
原理的には自分には全く関係ない。
当然、それについて何らかの責任を負うことも必要ない。ように思える。

しかし、入社以後は自分はその会社の一員になる。

そうなると、会社が起こした過去の不祥事で不利益を被った人々へも
「会社の人間として」対応しなければならなくなる。

「いやぁ〜、それについては私はよく分かりませんので・・・」
という態度は許されなさそうだ。

「そんなこと聞かないでください!不祥事を起こした当時の幹部に聞いてください!」
という態度は許されなさそうだ。

という話です。

他には、

2次世界大戦中に日本が東アジア諸国に対して行った行為について、
その時代に生きていなかった自分がどのように関わるかという話とも同じです。

他には、

例えば、先祖が過去にとんでもない犯罪を犯していた。大量殺人とか。
罪を犯したのは自分ではないけど、遺族やその子孫に対してはやはり申し訳ない。
申し訳ないと思うということは、先祖の罪を自分が引き継いでいるということ。

そんな話だと思います。

望むと望まざるに関わらず、
自分はそういう歴史を持つ場所に生まれてしまった。
そういう場所に「投げ込まれて」しまった。


      自分が直接関わってないから責任うんぬんの話はあり得ない、

という立場をとるのか、

      自分は関わっていなくても、自分の所属する共同体の責任は
      当然引き継ぐべき、

という立場をとるか。

この問題には、この2極が存在しているようです。

う〜ん、どう考えれば良いんでしょうか。
難しいですが、考えていきたいと思います。

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