《神戸異人館ベンの家。人が平床で寝るようになったのは最近のことだとか。》
「それ」と直接の接点がなくても「それ」について語ることは原理的には可能だ
ということを書きました。
今回は続編。
バリエーション。
例えばサッカー。
もう熱は過ぎたようですが、
ワールドカップのサッカーで日本代表を応援する人たちについて。
彼ら自身、
コートにいる選手よりも速く走れないし、
強くボールを蹴れないし、戦況も読めないし、
当たりも強くないと思います。
にもかかわらず、
試合について何事かを言うことができる。
少なくとも言っていいことになっている。
自分は選手達のようにサッカーがうまくないにも関わらず、
選手がシュートを外したり、試合に負けたりすると、
まるで鬼の首でも取ったかのように居丈高になって、
選手もしくは監督を罵倒する。
「サポーターは12人目の選手」というような論理が、
そういった態度を助長しているようです。
ぼくは、そういう態度が悪いと言っているわけではありません。
むしろ、どっちかと言うと逆で、
「自分はサッカーができなくても、
サッカーができるプロの選手に対して、
サッカーについて意見することができる」
ということが原理的には可能だということを言いたいのです。
つまり、釈迦にも説法できるということです。
言い換えると、
自分の能力の有無に関係なく、
しかもそれを自覚していたとしても、
自分ができないことについて（時には厳しく）意見することができる。
ということです。
しても良いということです。
しかし、
目を転じて日常生活レベルに話を移すとちょっと事情が変わってきます。
例えば、ここにダンスが好きな2人の人がいたとします。
2人は先生でもなんでもなくただの愛好家です。
このうちの一方が相手に対して、
ダンスの技術に関して劣等感を抱いている。
もう一方も相手が自分に引け目を感じているということを知っている。
それによって、後者は前者に対して多少の優越感を抱いている。
こういう状況で、
前者が（果敢にも）後者にこう言ったとする。
「あなたの踊りには、何か足りないと思うんだよね。
なんか、こう、ビビッ！と訴えかけてくるようなものっていうか・・・」
前者は、
相手に劣等感を抱いているので、
こんなことを言うことがいかに冒険であるかを自覚しています。
後者は、
前者よりもダンスがうまいと自覚しているので、
こんなことを言われたら、次のように反応すると思います。
「あなたには言われたくない。」
あなたは私よりどれだけうまいの？
あなたにはそんなことを言う資格があるの？
と。
先に挙げたサッカーの例のように、
サポーターから「なんだ、今日の試合！最低の出来だ！」
みたいなことを言われたとしても、
「何言ってんだ！お前らはおれみたいにサッカーできないだろ！
お前らにそんなことを言う資格はない！」
と反発する人はいないと思います。
「まだまだ力不足なので・・・」といった、
当たり障りのない謙虚なコメントを言うだけだと思います。
この違いは何でしょうか？
自分よりも仕事ができないと思っている人から仕事上のアドヴァイスを受けたり、
いつもだらしない人から生活習慣上の苦言を呈されたりしたら、
どう反応するでしょうか？
きっと
「おまえには言われたくない。」
「あんたにそんなことを言う資格はない。」
と反応するはずです。
でも、一方では。
自分は日本代表に対して何も言う資格はないということを自覚していながら、
言いたい放題を言えてしまう。
少々過激なことを言ったとしても、大しておとがめもないし、
言われた選手本人も「言われても仕方ない・・・」と受け止めて
（内心はどうかは知りませんが少なくとも表面では）
反発するような真似はしない。
言われる相手の数によるのでしょうか？
相手を自分が認めているかどうかによる？
職業だから？お金をもらっているから？
サッカーの例とダンスの例、
話としては同型のように思いますが、
言われた時の反応が違う。
なかなか興味深い現象だと思います。
人の道から外れた外道者であったとしても、
人の道を説くことはできる。
しかし、それを受け入れられるかどうかは別問題。
ということでしょう。
まったく同感だね。
自分が言われる側になる事も多いので・・・
そんなとき、
思い出すのは中島みゆきさんの名曲「ファイト」の一節
【ファイト！戦う君のことを、戦わない奴らが笑うだろう・・】
というフレーズ・・心にしみるぜ・・・
イビチャ オシムが言った、
あなたも、90分炎天下の中を走ってみなさい・・・
も、しみるな・・
コメントありがとうございます！
生きていると、他の人に対して
「実際にやってないのに偉そうなことを言うな！」
と思う時もあるし、他の人からそう思われる時もあると思います。
でも、言って良い基準とかっていうのはどこにあるんでしょうか。
考え続けるべき問題だと思います。