#96 "けんか"という手段1-社交ダンス界に流通する価値観4

 


 

昨日に引き続き、札幌の空は荒れています。

 

 風がびゅうびゅう。

 雨がばらばら。

 

 窓をたたく雨粒越しに見える窓外の景色が、ぶよぶよと水の膜に揺れている。


 木々の緑や水色の空。

 色鮮やかな夏の風景を一掃するような空模様。


 夏が終わって秋が来て。

 季節が移り変わる瞬間を見ているようです。


 今回からは"けんか"について。

 2回に分けて何かを考えたいと思います。


 ************************************


 "けんか"は手段。

 ダンスが上達するための。

 

 お互いの踊りたい方向性。

 強調したいタイミング。

 表現したいフィーリング。 

 描きたい練習計画。

 

 そういう諸々について、お互いの意見をすり合わせる上での"けんか"。

 

 「自分はこうしたい。」

 「いやいや、私はこうしたい。」とか。


 「この前、2人で確認したところをきちんとやってない。」

 「いや、やっている。」とか。


 練習中にパートナーとけんかをする。

 

 そんなことは日常の風景すぎて、誰も気にも留めない。

 誰も疑問に思わない。


 けんかして当たり前。

 けんかすることでお互いの理解が深まる。

 けんかすることでお互いの絆が深まり、効率の良い練習につながる。

 そんな理解。

 むしろ真剣に練習に取り組む証として、奨励される向きすらある。


 社交ダンス界における、パートナーとの"けんか"は、そういう位置付けになっているようだ。


 「けんかするぐらいお互いの本音をぶつけあって、向上していきなさい。」 


 そういう価値観が、社交ダンス(特に競技ダンス)の世界に浸透している。


 この世界では、


  けんか = 本音を言う = 建設的なより深い関係へ


 こういう図式が浸透しているらしい。


 "けんか"はコミュニケーション促進の起爆剤。

 そう信じられている。


 確かに、本音を伝えるということは、遠慮しあう関係に風穴を開けて、さらなる創造のためのスプリングボードになると思う。


 でも。

 なんか嫌だ。

 だからといって、なんで"けんか"しないといけないんだ。

 そう思う。

 そう思ってしまうんだから仕方がない。


 創造のきっかけになるからといって"けんか"しなくても良いと思う。

 "けんか"なんてしなくても、本音は伝え合えると思っている。

 テクニックは要るだろうけど、けんかをする必要はないと思っている。

 自分は"けんか"なんてしたくないと思っている。


 何で"けんか"したくないか。

 それは無駄なことが多いから。

 得なことが少なくて、損なことが多いから。


 暴言を吐かれてまで、冷静に思考して対応できるほど、自分は聖人君子でもないし、暴言を吐いてまで「これはあなたのため。自分達のため。目的のため。」と居直れるほど、神経は太くない。


 「創造的なけんか」みたいなものがあるとしても、できればしたくないと思う。 



 深い関係になりたい相手、長く付き合いたい相手であればあるほど、"けんか"はしたくないと思っている。


 自分は感情をあまり出さずに、相手に対してマイペースに接する方が良いことだと思っている。自分の場合、感情というか気分の起伏が激しい方だと思っているので、衝動的な言動で相手を傷付けたくないと思っている。

 

 相手が感情を出してきた時、その受け皿になるような存在でいたいと思う。

 

 「あぁ、この人は、こういう経路を通ってきて、こういう理由で嬉しがってるんだなー。悲しんでいるんだなー。怒っているんだなー。」

 

 と。


 そういう態度で応えたいと思っている。


 これは、「自分の中にある感情というマグマを"抑え込む"」というのとも違う。

 

 人間は感情の生き物だから、抑え込むなんて出来るわけがない。

 抑え込んだら、きっと病んでくると思うし。


 ただ、それの表への出し方の問題だと思う。

 マグマは絶えず運動して、小出しに、時には一気に、常に表に出ることをうかがっている。


 それが人に向くか、自分に向くか、それ以外の対象に向くかの違い。

 そして、どれぐらいの分量が出るかの違い。


 感情の出し方の問題。

 何に価値を置くか、という矜持の問題でもある。


 不和を生んでまで主張したいことなんて、そんなにたくさんないと思う。

 人にもよるけど、片手で数えられるぐらいなんじゃないだろうか。


 

 なぜ、自分がこういう態度をとるに至ったか。 

 次回は、自分の経験に即して、このことについて進めていきたいと思います。

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